人工肉のコーヒー版?豆レスコーヒーAtomo(アトモ)がHorizons Venturesからの260万ドルのシード調達

 

豆レスコーヒーのAtomo

コーヒーの消費量は急増しているが、持続可能性に関する大きな課題がある。そんな課題を解決すべく、ラボで作られた分子コーヒーでコーヒー豆の代替を目指すスタートアップがAtomoがシードラウンドで260万ドルを調達した。Atomoはコーヒー豆の成分をリバースエンジニアリングし、コーヒーの香り、風味、口当たり、色を作り出す化合物を特定して本物のコーヒーに近い液体を実験室で作り出すという。

 

コーヒー豆生産の近未来:気候変動という危機

コーヒー市場は、現在持続可能性に関する大きな課題に直面しています。気候変動により世界の主要なコーヒー生産地域に大きな混乱をもたらすと予想されている。現在コーヒー豆が生産されている地域の50%は、2050年までに作物に適さない気候になるという予測もある。すべての野生コーヒー種の60%が絶滅の危険にさらされているという研究結果もある。こうしたコーヒー豆生産の厳しい未来予想図を考えると、Atomoの掲げる未来は十分に魅力的だ。

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模倣コーヒーだけじゃない:好みのコーヒーにチューニング

Atomoの実験室コーヒーは単にコーヒーっぽい風味を作り出すだけではない。リバースエンジニアリングで分解したコーヒーの成分を制御することで風味や味を消費者の好みに合わせて微調整することもできると主張している。Atomoは単なるコーヒーの模倣ではなく、本物よりも優れたコーヒーを作り出したいと考えているのだ。

 

ベンチマークはビヨンドミート

 近年農畜産業における代替品でもっとも成功したものがビヨンドミートなどが製造するミートレスミート、つまり人工肉や乳製品レス牛乳だろう。Atomoの主任科学者、ジャレット・ストップフォース博士はこうした先行例を引き合いに、「我々はコーヒーでこの市場を作っていく」と胸を張る。シード資金で260万ドルの資金を調達した際もベンチマークとされる企業はBeyond MeatやImpossible Foodsであったという。

 

人工肉市場との違い

しかし豆を含まないコーヒーは、本当に次の肉なしバーガーになるほどのポテンシャルを秘めているのだろうか?その点について批判的な考察をしてみる。まず代替肉・人工肉と違う点として「倫理の問題」が少ないことが挙げられる。人工肉が消費者に受け入れられた理由の一つとしては、やはり家畜にたいする倫理的な問題があげられるからだ。コーヒー生産者が直面する持続可能性の課題という観点では畜産業が地球環境に及ぼすCO2排出などによる悪影響と同列に並べてベンチマークにすることは可能だが、しかし「倫理面の問題」がないコーヒーという農作物を人工肉の市場と同列に扱っていいのか?という論点はあるだろう。もちろん、近年問題視されるようにコーヒー生産地の発展途上国におけるコーヒー生産者の人権問題などは倫理の問題として残っており、認証豆などエシカル消費の盛り上がりもある。しかし人工コーヒーの市場が拡大した場合そもそもそうしたコーヒー生産者は救われるどころか職を失うかもしれない。

 

Closedなテスト期間中、本当に成立するかは未知数

Atomoの作るコーヒーは直近はまだ市場投入するような段階ではないという。製品が実際にどれぐらいの手頃な価格で提供されるかもまだ決まっていない。そして本当にAtomo社がいうようなコーヒーのような味が再現されているかもまだよくわからない。コーヒーは会社が開いた学生との非公式の味覚テストではうまくいったというが、他のレビューではそれほど良い評価はえられていないという。

 

 参考

Is Coffeeless Coffee the Next Impossible Burger? | Seattle Met

Scientists Create Beanless Coffee Without The Bitterness Of Regular Joe : The Salt : NPR